21世紀COEプログラム : 特異性から見た非線形構造の数学

数理科学研究分野紹介:“拡がる数学”

現代社会では,科学技術の発達や社会・政治・経済構造の複雑化・多様化とに伴って生じた様々な数学的な問題を解決する応用数学分野での人材の育成が課題となっています。

北大の数理科学系では,このような応用数学に関する国際的な潮流を早くから取り入れ,応用数学分野の研究をフロンティア精神とともに強力に推進しています。今後も応用数学の最前線において一層の研究成果を上げると同時に,これまでに培ってきた教育の実績をより発展させて,応用分野において社会で活躍できる学生を指導したいと考えています。



神保 秀一:微分方程式と応用スペクトル解析
我々は外界からの刺激を受け物理現象を知り観察 します。それらは音波や光などの波動の形で私たち のもとにやってきますが,その種類は振動数やスペ クトルという特性によって区別されます。これらの 現象は微分方程式や解によって記述され,その解析 が数学者にとっての重要な課題となります。
中村 玄:逆問題の数理
非破壊検査,医療工学そして地震に関する逆問題を中心にその数学解析,アルゴリズ ム,数値実験について研究している。具体的には,媒質中の亀裂,空洞,介在物など の形状の同定,残留応力の同定,巨大地震を起こす断層面の同定,MRIによる肝臓 癌,乳癌の同定などである。
西浦 廉政:数理の実験工房
自然を理解する方法は多様であるが,数理モデルを用いて計算機の中に 「小自然」を作り,それを解析することにより,その背後にある普遍的構造を 取り出し,理解することを目指す,いわば数理の実験工房という営みを実践して いる。
津田 一郎:カオスと脳のダイナミックス:複雑系の数理
複雑な運動だが美しい構造を生み出すカオスのような数理的実体に強く引かれ る。そこから始まって,脳の中のカオス,動的な脳の数理的研究を行なってい る。また,生命的なシステムとしての複雑系に関する科学の構築を目指している。
井上 昭彦:確率論とその周辺
予測理論,数理ファイナンス,時系列解析,タウ バー型定理,などに興味を持っています。現在,最も力を入れ て研究しているのは,新しい予測理論的手法による記憶を持つ 確率過程の解析です。
松本 健司:複雑系の数値解析
タンパク質等の高自由度系の挙動を計算機でシミュレーションし,力学系の概 念を応用して解析しています。ある種の低次元力学系に広く現われる微細なア トラクターの数値解析もやってます。
坂上 貴之:流体運動の数理
流体の運動は不思議である。例えばコーヒーにクリームを落してみよう。刻一刻と変わる形は一見乱雑に見えて実はそこに様々な構造が生れては消えている。そんなことを数学の言葉で表現したい。
佐藤 譲:複雑系,生物情報処理
非線形動力学の視点から生物情報処理の研究をしています。記憶と学習のダイナミクス,培養神経系の力学系モデル,カオス力学系の情報理論的,計算論的な分析などが最近のテーマです。
吉田 知行:計算数学
計算機のための基礎理論を研究しています。数学を矢印で記述しようというカテゴリー論,排中律を排除した直観主義論理(この論理での証明は計算機のプログラムに書ける),離散数学,特に数え上げの組合せ論とグラフ理論,さらにデータのやりとりを雑音から守る誤り訂正符号が中心的テーマです。
飯間 信:生物流体力学の基礎
昆虫や魚などの生物は水や空気などの流体中で運動し,自分のはねや 尾びれからはがれた渦を有効に活用して効率よく運動しています。 その機構は渦運動,剥離,物体運動が絡んだもので,詳細に ついてはよく知られていません。ここでは実際の生物の形や運動を単純化 した場合を研究することで,その機構を知ろうとしています。
行木 孝夫:離散力学系と確率解析
セルオートマトンという単純な規則から多様な挙動を示す力学系について, 特に熱統計力学的な扱いを中心に研究している。現在,粒子的な挙動を示す保存系に集中して研究を進めている。同時に近年発展の著しい量子酔歩も研究中である。
柳田 達雄:動的複雑パターンの数理
雪の結晶,雲など自然界には多様な形・パターンが満ちている。 これらのパターンは非線形性や非平衡性に起因して形成されている。 形の生成過程を見てみると,一定の形に落ち着いたり,成長したり, 時間的に変幻自在に形を変えたりと様々である。 雲・河川・結晶などのパターンを形づくる背後にある数理的な機構を モデルの構成,計算機シミュレーション,理論解析により 明らかにしている。
21世紀COEプログラム : 特異性から見た非線形構造の数学