21世紀COEプログラム : 特異性から見た非線形構造の数学

解析学研究分野紹介

解析系における研究テーマは,数理物理,応用解析,偏微分方程式論,幾何学的測度論,関数解析,作用素環論,実解析,複素解析,代数解析などであり,応用を意識した分野から抽象的な分野まで幅広く研究を行っています。

例えば流体力学の基礎方程式や,プラズマ現象を記述する方程式などでは非線形偏微分方程式が現れます。これらの方程式の局所解の存在・一意性,大域解の存在,解の漸近挙動,滑らかさ,特異性を調べることが大切です。非線形ゆえの宿命で,比較的個別にそれぞれの問題を研究しなければなりませんが,時として驚くべき構造が方程式に隠されていることもあります。このような偏微分方程式の研究において重要な手法となるのが,関数解析と実解析です。

関数解析とは関数の集合の成す空間の解析を行なう分野であり,微分方程式や積分方程式あるいはフーリエ解析との関連で発展してきました。また量子力学との関連で,フォン・ノイマンが重要な貢献をした分野です。このフォン・ノイマンの先駆的業績は,作用素環論という形で現在に引き継がれており,解析系においても研究が行われています。

数理物理との関連でいえば,場の量子論の研究も行なわれています。場の量子論の数理は多方面にわたり,数学のほとんどの分野が関連してくるので,それを厳密な方式において窮めるにはいろいろな数学が必要とされます。これは関数解析や確率論のみならず,幾何学やトポロジーあるいは数論とも関連して研究されています。

また複素解析との関連でいえば,ハーディー空間とその応用も研究されています。単葉関数についてのビーベルバッハ予想は作用素論を用いて解決されましたが,ハーディー空間と作用素論の相互作用が研究されています。

また複素領域やリーマン面と呼ばれる曲面上の有界正則関数全体の性質と構造が研究されています。複素領域を定めるとその上で有界正則な関数全体が定まり,この関数全体の集合は各点毎の演算 (和・積・スカラー倍) をもち,一様収束で閉じています。この関数全体の構造を調べると,はじめの領域や曲面の幾何的構造を復元できることがあり,これらの構造を調べると数学的に等価な対象の異なった側面が見えてきます。

また代数解析学も研究されています。代数解析学とは,解析と代数を融合して種々の問題を考察するという,日本人の手によって始められた,真に独創的な分野です。その中でも不確定特異点型の極大過剰決定系の分類問題が研究されています。

また実解析が研究されています。関数の詳細な振舞いを扱うためには,フーリエ解析に基づく実解析的手法が重要であり,これは偏微分方程式の解の研究にもよく用いられます。また関連してウェーブレットが研究されています。ウェーブレットとは1985年に発見された関数列で,これを用いて関数を展開することにより, 関数の局所的な性質をより深く調べることができるようになります。

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